眼科疾患・手術
網膜硝子体疾患
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性について
加齢黄斑変性とはどんな病気
加齢黄斑変性(AMD)は加齢に伴い黄斑部(物を見るために重要な部分)に老廃部が蓄積し変性する疾患で、視力の中心部が障害されます。近年では日本でも患者数が増加しており、実に50歳以上の約1%に見られます。高齢になる程患者数は増え、日本における失明原因の第4位となっています。
従来は大きく萎縮型と浸出型に分類されていましたが、2023年にガイドラインが改訂され萎縮型と新生血管型へ分類されるようになりました。また加齢黄斑変性の発症背景としてパキコロイド(脈絡膜大血管の拡張や脈絡膜血管が透過亢進している状態)が注目されており、AMDにおける新たな概念としてパキコロイド新生血管症が提唱されるようになりました。
治療は?
萎縮型AMD
黄斑部にドルーゼン(網膜下の脂質沈着)蓄積し、網膜色素上皮(RPE)の萎縮が徐々に進行していきます。RPEは光受容体である視細胞(錐体や桿体)への栄養供給や老廃物を排出する役割を担っているため、RPEの萎縮により視細胞も損傷し、視力低下を引き起こします。残念ながら現在、有効な治療法はありません。
新生血管型AMD
異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害される病気です。進行は急速で、視力が急激に悪化するため、早期の治療が不可欠です。主な治療法は抗VEGF治療による硝子体注射で、新生血管の成長を抑制し視力低下を防ぎます。光線力学療法(PDT)やレーザー治療も補助的に用いられることがあります。当院では抗VEGF薬とレーザーによる治療を行っています。
症例1
OCT画像(治療前)
網膜下液と網膜色素上皮剥離を認める
OCT画像(治療後)
網膜下液は消失している
症例2
眼底写真(治療前)
多量の網膜下出血を認める
眼底写真(治療後)
網膜下出血は減少している
OCT画像(治療前)
網膜下に多量の低輝度物質(出血)を認める
OCT画像(治療後)
網膜下の低輝度物質は減少している
どの時期に治療を開始すべき?
新生血管が形成される前や初期段階で治療を開始することが最も効果的です。視界に歪みや暗点を感じた時点で速やかに受診し、早期介入が視力の維持に重要です。
視力予後は?
萎縮型AMDは進行が遅く、視力低下は緩やかですが、有効な治療法がなく長期的には視力が失われる可能性があります。
新生血管型AMDは発症後早期から治療を開始し継続することで視力を安定化、維持することが期待できます。ただし、完全回復は難しく治療の中断により再発もしくは悪化することもあり、できる限り再発を繰り返さないことが大切です。