眼科疾患・手術
網膜硝子体疾患
硝子体注射について
硝子体内注射とは
硝子体内注射は、硝子体内に直接抗VEGF (Vascular Endothelial Growth Factor)薬を投与する治療法です。抗VEGFとはVEGFの作用を抑制することで新生血管形成を抑え、病的血管の漏出や増殖を制御する治療薬です。主に、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視による脈絡膜新生血管などに用いられます。
方法
必要な検査後、散瞳(瞳を開いた)した状態で行います。点眼薬による局所麻酔をしたのち、結膜(白目の部分)に細い注射針を用いて薬剤を硝子体内に注入します。処置自体は短時間で、痛みはほとんど感じません。
当日の流れ
当日は問診、眼の消毒、麻酔を行い、注射後には経過観察をします。処置後すぐに帰宅可能ですが、処置眼には眼帯をしていますので十分に注意してお帰りください。
合併症
硝子体内注射は一般的に安全性が高い手技ですが、稀な合併症も重篤な結果を招く可能性があります。
合併症としては、下記のように感染症(眼内炎)、眼圧上昇、網膜剥離、硝子体出血などが挙げられます。
1. 眼内炎
頻度: 約0.02~0.09%
最も重大な合併症で、失明のリスクがあります。注射時の無菌操作が極めて重要です。術後の痛み、視力低下、充血などの症状があれば速やかな対応が必要です。
2. 硝子体出血
頻度: 約0.1%以下
血管に針が触れた場合や抗凝固療法を受けている患者で発生しやすいですが、多くは一時的で自然吸収されます。
3. 網膜剥離
頻度: 約0.01~0.05%
注射により硝子体牽引が生じることで発生します。早期発見と手術による対応が求められます。
4. 眼圧上昇
頻度: 短期的眼圧上昇は20~50%の患者で見られるが、永続的なものは 0.3~0.7%程度
硝子体内の薬剤や液量による一過性の上昇が多いですが、繰り返しの注射により慢性化する場合もあります。緑内障患者には注意が必要です。
5. 角膜上皮障害
頻度: 約0.5~2%
麻酔や消毒時の薬剤刺激が原因となることがあります。一時的な症状で軽度に留まることが多いです。
6. 全身性リスク(特に抗VEGF薬使用時)
頻度: 明確な頻度は不明だが、脳梗塞や心筋梗塞のリスクは議論あり
抗VEGF薬が全身に吸収されることで、血栓性イベントのリスクが増加する可能性が指摘されています。特に心血管系疾患の既往がある患者で注意が必要です。数ヶ月以内に脳梗塞や心筋梗塞の診断された方は申し出ください。
治療スケジュール
治療のスケジュールは疾患や患者様の目の状態に依存します。担当医にご相談ください。