眼科疾患・手術
眼瞼・眼窩・涙道疾患
眼瞼下垂
眼瞼下垂とはどんな病気?
退行性眼瞼下垂は、加齢に伴ってまぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋)やその腱膜が徐々に弱くなり、まぶたが下がる病気です。同様の症状は、長期のハードコンタクトレンズ使用でも起こることがあり、これはレンズの着脱時の機械的刺激が原因とされています。まぶた自体が下がっていなくても、まぶたの皮膚が弛緩することで前に垂れ下がっている場合も同じような症状となるため、広義の眼瞼下垂に含まれます。
眼瞼下垂により視界が狭くなると、無意識のうちに顎を上げたり、眉を上げたりする代償動作が起こります。この姿勢の変化は、首や肩に負担をかけ、頭痛や肩こりの原因となることがあります。また、まぶたが瞳孔にかぶることにより、見にくさを感じることがあります。それらの症状が本当に眼瞼下垂によるものかどうかについては、まぶたを手で持ち上げたときに症状改善することにより判断できます。
症状は両側に出る場合もあれば、片側だけの場合もあります。一般的な症状として、朝や夕方に特にまぶたが重く感じる、読書や運転時に視界が妨げられる、額にしわを寄せて目を開けようとする、などが挙げられます。
通常、眼瞼下垂は徐々に進行するので、急激に目が開きにくくなったり、ものが二重に見えるようになったりした場合には、重症筋無力症や動眼神経麻痺などの別の原因について調べる必要があります。
眼瞼下垂の状態
挙筋前転法術後
上眼瞼皮膚弛緩症
眉毛下皮膚切除術後
治療は?
退行性眼瞼下垂に対しては、手術を行います。重症筋無力症や動眼神経麻痺がある場合には、原疾患に対する治療を行います。
どの時期に手術すればよいのでしょう?
手術のタイミングは、症状が日常生活に支障をきたす程度によって判断します。具体的には、視界が制限され、読書や運転などの日常活動に支障がある場合、頭痛や肩こりなどの症状が出現している場合、外見の変化が気になり社会生活に影響がある場合などが手術を検討する目安となります。
手術内容は?
手術による治療は、通常局所麻酔で行われ、日帰りで実施可能です。不安が強い場合には、点滴による鎮静を併用した手術も行っています。
手術方法は、筋肉の状態や症状の程度によって選択されます。代表的な術式である上眼瞼挙筋短縮術では、皮膚を切開して弱くなった筋肉を短縮して縫い直すことで、まぶたの開きを改善します。必要に応じて余分な皮膚を除去します。手術時間は両側で1時間(片側なら30分)程度です。
極端に筋肉が弱く上眼瞼挙筋短縮術で対応困難な場合には、ゴアテックス®️という人工物を眉毛部とまぶたを連結することにより、まぶたを開きやすくします。
また、まぶたの位置が正常で皮膚のみが弛緩している場合には、皮膚の切除のみを行います。上まぶたの皮膚を切除する場合と、眉毛下の皮膚を切除する場合があり、術式は整容面を考慮して決定します。
術後の経過は?
手術当日は痛みを感じることがあるため、必要に応じて鎮痛剤を内服いただきます。
術翌日には、まぶたの腫れや内出血が見られますが、これらは徐々に改善します。腫れは1週間程度で落ち着き始め、3〜6ヶ月程度で最終的な仕上がりに近づいていきます。抜糸は通常、術後5日〜2週間の時点で行います。抜糸の時点で術中定量より大きな誤差が見られる場合には、同時に修正を行うこともあります。
洗顔や洗髪、入浴は手術の翌日より行っていただけます。石鹸やシャンプーを泡立ててやさしく創部を洗浄するようにしてください。