眼科疾患・手術
眼瞼・眼窩・涙道疾患
眼瞼腫瘍
眼瞼腫瘍とはどんな病気?
眼瞼腫瘍は、まぶたに発生する腫瘍性病変の総称です。良性と悪性の両方があり、良性腫瘍には脂漏性角化症、色素性母斑(ほくろ)などが含まれます。一方、悪性腫瘍には基底細胞癌、扁平上皮癌、脂腺癌などがあります。まぶたは皮膚が薄く、様々な組織(皮膚、筋肉、脂腺、汗腺など)で構成されているため、それぞれの組織から異なる種類の腫瘍が発生する可能性があります。
基底細胞癌は高齢者に多く見られ、日光暴露が主な原因の一つとされています。特に、普通のほくろと異なる色調、出血や潰瘍の形成、急速な増大などがある場合は、悪性を疑う重要なサインとなります。脂腺癌はまぶたの脂腺であるマイボーム腺に発生し、大きくなると転移するリスクもあります。
治療は?
治療方針は、腫瘍が良性か悪性かによって大きく異なります。良性腫瘍の場合、多くは経過観察で問題ありませんが、整容上の問題や異物感がある場合は、局所麻酔下での切除手術を行います。しかし、見かけだけでは良性か悪性かを100%見分けることはできないのが問題です。そのため、良性腫瘍のような外見でも拡大傾向のあるものは切除を行い病理診断を確認します。
悪性腫瘍が疑われる場合は、まず一部を切除して病理診断を確認します。そして腫瘍の種類に応じて、3〜5mmの安全域をとって拡大切除を行います。切除後の欠損部位は、周囲の皮膚を移動させる局所皮弁や、他の部位から皮膚を移植する植皮術などで再建を行います。
また、悪性度が高い腫瘍の場合は、手術後に放射線治療や化学療法を追加することもあります。
どの時期に手術すればよいのでしょうか?
良性腫瘍の場合は、患者さんの希望やスケジュールに合わせて手術時期を決定できます。ただし、腫瘍が徐々に大きくなる傾向がある場合は、早めの切除をお勧めします。
一方、悪性腫瘍と診断された場合や悪性が強く疑われる場合は、可能な限り早期の手術が推奨されます。特に、急速に増大する場合や出血、潰瘍形成がある場合は、早急な手術が必要です。ただし、術前の検査や画像診断で腫瘍の範囲や深さを十分に評価し、適切な切除範囲と再建方法を決定することが重要です。
手術内容は?
手術の方法は、腫瘍の性質、大きさ、位置によって異なります。
良性腫瘍の場合は、局所麻酔下で腫瘍のみを切除する単純切除術が一般的です。手術時間は15-30分程度で、多くは日帰り手術が可能です。
悪性腫瘍の場合は、腫瘍の完全切除と再建手術を同時に行います。安全域を付けた切除を行うため、切除範囲は良性腫瘍より大きくなります。再建方法には、局所皮弁法(周囲の皮膚を移動させる方法)と植皮術(他の部位から皮膚を移植する方法)があり、欠損部位の大きさや位置によって適切な方法を選択します。手術時間は1-3時間程度で、場合によっては入院が必要です。悪性腫瘍では全て取りきれているかの判断のため病理検査が重要になるので、設備が整っている大阪大学医学部附属病院で計画をさせていただきます。
術後の経過は?
皮膚の縫合を行った場合には、1週間程度で抜糸を行います。術後の腫れや内出血は2週間程度で改善し、傷跡も徐々に目立たなくなっていきます。洗顔、洗髪、入浴は翌日から行っていただけます。
悪性腫瘍の手術後は、より慎重な経過観察が必要です。腫れや内出血の改善には2-3週間かかり、創部の安定には1-2ヶ月程度必要です。再建を行った場合は、皮弁や植皮の生着を確認しながら、慎重な創部管理を行います。
また、悪性腫瘍の場合は、定期的な経過観察が特に重要です。再発や転移の早期発見のため、術後5年間は定期的な診察と検査を継続します。再発のリスクは腫瘍の種類によって異なりますが、特に手術後2年間は注意深い観察が必要です。また、術後の放射線治療や化学療法が必要な場合は、治療スケジュールに沿って計画的に進めていきます。