ドライアイは、目の表面を潤す涙の量が減少したり、涙の質が低下したりすることで、目の不快感や視機能の異常を引き起こす病気です。日本では約2,200万人が罹患していると推定される、とても身近な眼の病気です。涙は単なる水分ではなく、油分やムチンという成分を含む複雑な構造をしており、これらの成分のバランスが崩れることでも発症します。

主な症状には、目の疲れやごろごろ感、異物感、充血、まぶしさ、目が重い感じ、視界がぼやける、などがあります。特に、長時間のパソコンやスマートフォンの使用、乾燥した環境での作業後に症状が悪化することが特徴です。また、コンタクトレンズの使用も症状を悪化させる要因となります。

最近の研究では、ドライアイは単なる涙の量の問題だけでなく、目の表面の炎症も重要な要因であることがわかってきました。また、目の表面の神経の働きが低下することで、適切な涙の分泌が妨げられることも明らかになってきています。

また特別な注意が必要なのは、全身の病気に伴うドライアイです。シェーグレン症候群やGVHD（移植片対宿主病）では、体の免疫システムが涙を作る組織を攻撃してしまい、特に重症なドライアイを引き起こすことがあります。これらの場合、通常の点眼薬だけでは改善が難しく、より積極的な治療が必要となるため、眼科専門医による適切な治療と定期的な経過観察が重要です。

ドライアイの治療は、症状の程度や原因に応じて選択されます。基本的な治療として、人工涙液や涙の蒸発を防ぐ目薬の点眼が行われます。最近では、涙の質を改善する新しいタイプの目薬も開発されています。また、目の表面の炎症を抑えるステロイド点眼薬が処方されることもあります。

生活習慣の改善も重要な治療の一つです。適度な休憩を取り入れた画面作業、室内の適切な湿度管理、まばたきを意識することなどが推奨されます。必要に応じて、コンタクトレンズの使用時間の調整や、メガネへの切り替えも検討します。

ドライアイの治療は、まず人工涙液などの点眼薬から始めます。しかし、点眼薬を頻回に使用しても十分な効果が得られない場合や、目の表面に傷（角膜上皮障害）が認められる場合には、涙点プラグの挿入を検討します。また、シェーグレン症候群などで涙の分泌が著しく少ない場合や、コンタクトレンズ使用に伴う重症ドライアイの場合、そして自覚症状が強く日常生活に支障がある場合も、涙点プラグが有効な治療選択肢となります。

涙点プラグは、半年から1年の間に約20-30%が自然脱落するとされています。プラグが頻繁に脱落する場合や、より確実な治療効果を求める場合には、外科的涙点閉鎖術や涙小管切断術を検討します。これらの手術は永続的な効果が期待でき、成功率は90%以上とされています。ただし、手術による閉鎖は原則として元に戻すことが難しいため、一時的なプラグでの治療効果を確認してから検討することが多いです。

涙点プラグの挿入は、外来で行える処置です。点眼麻酔をして痛みを抑えた後、涙点に適切なサイズのプラグを挿入します。より永続的な治療を必要とする場合には、外科的涙点閉鎖術が選択肢となります。この手術では、涙点を切開して内側の粘膜を切除し、糸により完全に閉じてしまうことで、涙の排出を防ぎます。局所麻酔下で行われ、手術時間は15分程度です。プラグ治療で効果が不十分な場合や、頻繁にプラグが脱落してしまう場合に検討されます。

さらに重症例では、涙小管切断術という手術も選択肢となります。この手術では、涙を排出する管（涙小管）自体を切断することで、より確実に涙の排出を防ぎます。局所麻酔下で行われ、手術時間は30分程度です。涙点閉鎖術でも再発してしまうようなケースに用いられます。

涙点プラグ挿入後は、すぐに普段の生活に戻ることができます。処置直後は違和感を感じることがありますが、多くの場合数日で慣れてきます。定期的な通院で、プラグの位置や効果を確認します。必要に応じて、人工涙液などの点眼薬の使用を継続します。

プラグが脱落したり、効果が不十分な場合は、サイズや種類の変更を検討します。また、過度に涙が貯まる場合は、プラグを抜去することも可能です。

外科的涙点閉鎖術や涙小管切断術後は、1週間程度は軽い違和感が続くことがありますが、通常の生活には支障ありません。術後は抗菌点眼薬を1週間〜1ヶ月使用します。手術の効果は永続的ですが、まれに閉鎖部位が再開通することがあり、その場合は再手術を検討します。