文字サイズ

標準

特大

背景色

文字サイズ

標準

特大

背景色

公式SNS

施設紹介

眼科疾患・手術

眼瞼・眼窩・涙道疾患

涙道閉塞(なみだ目)

> もどる

涙道閉塞とはどんな病気?

涙道閉塞とは、涙の通り道が詰まってしまう病気です。普段、私たちの涙は目の表面を潤したあと、目頭にある小さな穴(涙点)から、涙嚢、鼻涙管という管を通って、鼻の中へと流れていきます。この通り道のどこかが詰まってしまうと、涙が正常に流れなくなり、常に涙があふれ出る状態になります。また、目やにが増えたり、目の周りの皮膚がかぶれたりすることもあります。

研究では、涙道閉塞患者の生活の質(QOL)は、視力0.6以下の白内障手術待機患者と同じぐらいに低下することが分かっています。このことから、涙道閉塞は患者さんが日常生活で大きな不便をきたしていることが示されています。

診断は、まず目頭部分にある涙嚢を指で押して、目頭の涙点から膿や涙が逆流してこないかを確認します。また、涙点から生理食塩水を流す通水検査を行い、水がスムーズに鼻へ流れるかどうかを調べます。この検査で水が流れない、あるいは涙点から逆流する場合は涙道閉塞が疑われます。必要に応じて涙道内視鏡検査や涙道造影検査なども行います。

涙道閉塞の原因は主に以下の三つに分類されます。第一に、長期の炎症による影響です。プールの習慣、緑内障点眼薬の使用、鼻炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)などにより、涙道の内側が炎症を起こし、粘膜が固くなって通路が狭くなってしまいます。

第二に、加齢に伴う変化です。私たちは1年間に約700万回ものまばたきをしており、このまばたきによって涙を送り出す「ポンプ」の働きをしています。しかし年齢とともに、この繰り返しの動きにより涙小管の弾力性が低下し、涙の流れが悪くなります。

第三に、その他の要因として、生まれつきの涙道の形成不全、外傷、抗がん剤治療(特にS-1による)、涙道周辺の腫瘍などが挙げられます。

涙道の構造

治療は?

治療方針は、涙道の状態によって大きく異なります。通水検査で明らかな閉塞が認められない場合は、人工涙液などで経過をみることがあります。しかし、涙道が詰まってしまっている場合は自然に治ることは稀なため、手術治療が必要となります。

どの時期に手術すればよいのでしょうか?

手術のタイミングについては、症状の程度や生活への支障、感染の有無などを考慮して決定します。特に涙嚢炎を繰り返す場合や、日常生活に著しい支障がある場合には、早めの手術をおすすめしています。

手術内容は?

手術方法は閉塞している部位によって選択します。涙点が閉塞している場合は涙点形成術を行います。総涙小管閉塞や鼻涙管閉塞の場合は、涙道内視鏡で閉塞部位を開通させた後に涙管チューブを挿入する手術を行います。閉塞が軽度の症例では、この方法で90%程度の成功率が期待できます。手術時間は30分程度です。鼻涙管閉塞の中でも閉塞が強固であったり、涙嚢炎により涙嚢が拡張してしまっている症例では、チューブを入れる手術では治癒率が50%程度まで低下します。このような場合には、涙嚢鼻腔吻合術(DCR)という、鼻腔内の骨を削って涙嚢から鼻の中に直接新しい通路を作る手術を選択します。この手術の成功率は90%程度です。手術時間は約1時間程度です。

涙小管が閉塞している症例では、まずは内腔を広げて涙管チューブ挿入を目指しますが、閉塞が強いとうまくいかないことも多いです。そのような場合、結膜と鼻腔との間にバイパスを作る手術が必要となります。Jonesチューブという人工素材によりつなぐ方法と、涙嚢や結膜を繋ぎ合わせてつなぐ方法があります。

当院ではこれらの手術を局所麻酔で実施しています。必要に応じて、痛みを和らげる鎮静の点滴を併用します。全身麻酔希望の場合には、提携先の大阪大学医学部附属病院で計画をさせていただきます。

淚道内視鏡

涙管チューブ

涙管チューブ挿入術の手術風景

術後の経過は?

手術直後は、麻酔の影響で一時的に目の動きが悪くなったり、物が二重に見えたりすることがあるため、数時間は眼帯で保護します。また、術後数日間は鼻からの出血が見られることがありますが、これは徐々に改善していきます。

日常生活については、手術翌日から洗顔、洗髪、入浴を行うことができます。プールや海水浴は1〜2週間程度お控えいただいています。

治療経過として、術後は抗菌薬や抗炎症薬の点眼を行いながら、2〜4週間ごとに涙道の洗浄を行います。涙管チューブは、炎症が落ち着き、十分な通水性が得られたことを確認して、術後1〜3ヶ月後に抜去します。チューブ抜去は外来で行い、痛みはほとんどありません。

チューブ抜去後に再び涙があふれる症状(流涙)が出現した場合は、再手術を検討します。

> もどる